「田園都市線沿線」「小田急線沿線」「京王線沿線」「JR中央線沿線」「西武新宿線沿線」「西武池袋線沿線」「東上線沿線」のオーナーの皆様へ

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東京西部郊外の多摩丘陵、武蔵野台地に広がる広大な住宅地の事を、山の手の先にある住宅地と言う意味で「奥山手」の住宅地と呼んでよいと思います。具体的には田園都市線の多摩川を渡った二子新地より先、つまり中央林間までと、小田急線の狛江より町田まで、京王線(相模原線)の仙川から橋本まで、JR中央線の東小金井から八王子まで、西武新宿線の東伏見から新所沢まで、西武池袋線の保谷から小手指まで、東上線の和光市から川越までがそういう山の手の延長としての住宅地です。都内23区を補い、元の田園地帯が住宅地に変貌した地域です。当社はこの地域の不動産事情を調べています。そこでは重大な事が起こっています。

 1. 条件

当社にはたくさんの情報が集積していますが、今回はその中から、オーナー所有の一棟マンションについてまとめてみました。一応条件として、駅より徒歩10分以内、いくつかの駅ごとに区域を作ると、それぞれの区域ごとに4棟から10棟位のマンションを選びました。取り敢えず南部の3線(田園都市線、小田急線、京王線)のケースを見てみましょう。

2. 田園都市線沿線の賃貸事情

区域 (駅名) 60㎡の部屋の平均家賃
溝の口区域(二子新地、高津、溝の口) 130,100円
梶ヶ谷区域(梶ヶ谷) 122,700円
宮崎台区域(宮崎台) 123,900円
宮前平区域(宮前平) 123,500円
鷺沼区域(鷺沼) 122,900円
あざみ野区域(たまプラーザ、あざみ野、江田、市ヶ尾) 117,800円
藤が丘区域(藤が丘) 114,100円
青葉台区域(青葉台) 121,400円
長津田区域(田奈、長津田) 97,700円
中央林間区域(つくし野、すずかけ台、南町田、つきみ野、中央林間) 111,600円

以上です。家賃は募集価格でまた管理費を含んでいます。数字の出し方として、55㎡以上の部屋につき、募集価格を部屋の広さで割りそこから60㎡の換算値を得ました。

若干の出入りはありますが、全体としては非常に分かりやすく、世田谷からの距離に対応して下がって行きます。溝の口区域を出発点とすると、梶ヶ谷区域~鷺沼区域で1万円弱の低下、さらにあざみ野区域~中央林間区域で1万円弱の低下と言う所でしょう。

沿線の最後で2割ほど落ちているのが分かります。

 

3. 小田急線沿線の場合

 

区域(駅名) 60㎡の部屋の平均家賃
狛江区域(狛江、和泉多摩川) 142,000円
登戸区域(登戸、向ヶ丘遊園、生田) 120,200円
新百合ヶ丘区域(読売ランド前、百合ヶ丘、新百合ヶ丘、柿生) 104,600円
町田区域(鶴川、玉川学園前、町田) 122,500円

 

やはり東京都内は強く多摩川を渡ると下がります。 町田区域に至ってまた上がるのは、東京都と言うブランドと特に町田駅周辺は交通の利便性でしょう。

 

4. 京王線(相模原線)沿線の場合

 

区域(駅名) 60㎡の部屋の平均家賃
仙川区域(仙川) 146,600円
つつじヶ丘区域(つつじヶ丘) 146,200円
柴崎区域(柴崎) 129,300円
調布区域(国領、布田、調布、京王多摩川) 121,600円
稲田堤区域(京王稲田堤) 106,500円
稲城区域(京王よみうりランド、稲城) 103,700円
永山区域(京王永山、京王多摩センター) 104,700円
堀之内区域(京王堀之内、南大沢) 96,000円
橋本区域(橋本) 93,500円

 

京王線でも同様で、仙川区域、つつじヶ丘区域は世田谷区の延長的感覚で家賃は高水準です。柴崎・調布区域で1.5割ほど下がり、多摩川を渡ると3割ほど下がります。八王子市の堀之内地区・相模原市の橋本地区はやはり都内と距離があると言う所と思われます。

5. ご所有マンションの位置づけ

これらの数字を眺められて、マンションオーナーの方々のご所有マンションはどのような位置づけになるのでしょうか。もとより個別マンションごとに、 その周辺の環境、駐車場の広さ、間取設計・設備などにより個別状況の差が出て来ますが、大まかなところは上記のようなところです。今回は南部3線を見ましたが、事情は西部の4線でも同じです。平均より高く貸している ところは、経営の上手さによるのでしょうが、今後空室になる可能性を秘めています。平均より低く貸しているところは、持って行き方次第で今後賃貸率をさら に上げられるかもしれません。

6. 一部のマンションオーナーの苦悩

このような状況下、今一部のマンションオーナーの方は大きな選択の場面に立たされています。まず、何が起きているのでしょうか。これはいまさら言う までもないようなことですが、日本経済の成長が止まり、一方で人口減少社会の到来を迎えて、賃貸住宅に対する需要は減少し、その結果家賃は低下していま す。しかしながら、それにもかかわらず、大手デベロッパー、土地活用会社などが、駅近の有利なところを狙ってどんどん大型マンションを建てています。奥山 手は首都圏でも有望なところとみられているのかもしれませんが、各線の沿線を歩いてみると、いたるところで建築の光景を目にします。

そこでますます今述べた問題点が顕在化し、一部のマンションオーナーの方は困った状況になって来ています。

7. 具体例

具体的にどのような状況になってきているか、一つの例を見てみましょう。

マンション事情

  1. 田園都市線あざみ野駅徒歩9分 ②総戸数40戸 ③部屋の広さ 60㎡ ④家賃(管理費込)120,000円 ⑤築28年 ⑥当初の建築費 3億円 ⑦現在の借入金 2.5億円

このマンションの入居率100%の時の1年間のキャッシュフローを見ます。

(単位千円)

家賃収入 57,600
更新料・駐車場収入 2,400
通常管理費 2,200
修繕費等 5,820
減価償却費 5,708
固定資産税 3,000
借入金利息 4,500
諸経費・諸控除等 5,000
課税所得 33,772
所得税・地方税 14,000
借入金元本返済 17,000
家主の使える金 (①+②‐③‐④‐⑥‐⑦‐⑧‐⑩‐⑪)注 減価償却費は手元に残っている 8,480

800万円超の手元資金が残ればそれなりの生活は可能でしょう。

 

ここでこのマンションが空室率20%になったとして見てみましょう。他の諸経費類は変わらないものとします。

 

家賃収入 46,080
更新料・駐車場収入 2,400
通常管理費 2,200
修繕費等 5,820
減価償却費 5,708
固定資産税 3,000
借入金利息 4,500
諸経費・諸控除等 5,000
課税所得 22,252
所得税・地方税 8,300
借入金元本返済 17,000
家主の使える金 (①+②‐③‐④‐⑥‐⑦‐⑧‐⑩‐⑪)注 減価償却費は手元に残っている 2,660

 

家賃収入が2割減るだけで、家主の手元キャッシュが1/3になります。いっぺんに大変な状況になりました。

8. 誰が困るのか

どういう人が困ってきたのでしょうか。それは金融機関よりの借り入れの多い人々です。大型のマンションを個人で所有していると、表面的な家賃収入は 大きなものになります。もちろん諸経費や減価償却費、借入金利息などは経費として控除できるのですが、それでも不動産収入を中心とする課税所得の金額は大 きなものになります。これがだいたい2,000万円以上のレベルになってきますと、所得税・地方税合わせて35%から40%ほどの税金がかかります。この税金を払った後、金融機関に対する元利金の返済をするのですが、元本部分の返済金額が大きく、キャッシュフローに対する大きな負担となります。

さらに築年後年数を経ているマンションでは、修繕費、設備改良費が大きくかかります。

高い家賃が取れていて、満室経営の時はこれらの問題点もあまり表には出て来ませんが、昨今の先に述べた状況下では、お金が回らないという大変な事態を現出してきています。

オーナーは大きな苦悩です。

9. オーナーの選択肢を考える前の作業

それではオーナーはどうしたらよいのでしょうか。オーナーの選択肢は色々あるのですが、それを考える前に、そして、それを考えるために一定の作業が必要になります。

(1)その地域の正確な市場調査

その駅の周辺について、他の多くの賃貸物件がどのような家賃で貸しているか。オーナーの家賃は高いのか、低いのか。高いとするならば、どこまで下げればどのように空室率が下がるのか。

(2)過去の修繕履歴に基づいて今後の必要な修繕計画。

この場合は国土交通省作成のガイドラインが一つの参考となります。

(3)土地・建物の税法上の取得費の想定

過去の色々なデータから、取得費を想定します。購入、建築、負担付贈与、相続その他の場合で、色々なデータから取得費を想定します。この作業は、オーナーの色々な選択を考える場合に必要な作業です。

10. オーナーの選択肢

これらのデータを確保しておいて、いよいよオーナーの選択肢を考えます。

(1)オーナーが今までの不動産会社だけを頼りにせず、自らビラをつくり、また相当数の不動産会社に同時に声をかけて行動する。案内もする。(当社発行「全国貸地貸家協会新聞」11月号・12月号でこれを実践しているオーナーを取材)

(2)家賃を下げて空室率改善を期待する。この場合、色々な家賃の水準に対し、オーナーのキャッシュフローがどうなるかの分析が必要。

(3)サブリースに出す

(4)必要な修繕だけではなしに、本格的なリノベーション(改良、改造)をする。この場合、金融機関との交渉が必要になる場合もある。

(5)オーナーが出資して法人を作り、そこに物件を移す。この場合、オーナーには不動産の長期譲渡所得税がかかり、また法人の方では登録免許税、不 動産取得税がかかる。長期譲渡所得税の計算の為に先に述べた取得価格の想定が必要。法人に移すと、その先は毎年の収入に対して法人税だけなので納税は楽に なる。

(6)外部に売却する。

この場合、売却価格毎の納税、金融機関返済後の手元に残る資金の計算が必要。

また通常の収益物件として売る場合と、大手リノベーション会社に売る場合とでは価格が相当に違う。しかし、大手リノベーション会社に売る場合は、色々な書類の完備が要求され、また修繕計画の検討もありハードルは非常に高い。

(7) 区分所有形態の活用

不動産保有形態を区分所有形態に変更し、空室等相当部分をリノベーション会社等に売却する。自身もテナント入居済みの一部を保有し、当地で不動産賃貸業を継続する。

11. コンサルティング

当社はこれらの事のコンサルティングにつき豊富な実績がありまたオーナーの選択の結果の実現についての実績があります。色々な案をオーナーに提示し て、オーナーさんに決めてもらいます。コンサルティング料は物件価格、調査の複雑度により異なりますが、着手の当初に話し合って決めます。