自己信託を使って民亊信託を活用しよう

まず、民事信託とは何でしょうか。これは一部では家族信託とも呼ばれています。10年ほど前に信託法が変わりできるようになった財産の処理の仕方ですが、最近脚光を浴びるようになってきました。その仕組みは以下のようなことです。
ある人に一定の財産があるとします。その人は、主として自分の死後の財産の運用・活用について、何かの意思、希望を持っていたとしましょう。この場合に、自分の信頼のおける人にその財産の名義を移し、その運用・活用を頼み、またそのメリットを受ける人を指名します。こういう仕組みを民事信託と言います。

この場合、これを頼むある人の事を委託者、頼まれる人を受託者、メリットを受ける人を受益者と言います。従来の相続では、こういう次の世代に対する命令は全くできなかったので脚光を浴びています。欧米では当たり前のことで、イギリスなどでは200年の伝統があります。

こういう民事信託において、通常は信頼のおける他の人に頼む(信託契約)のですが、また遺言書の中でそういう事を頼む(遺言信託)のですが、自分が生きているうちは自分で自分に頼むやり方があります。これを自己信託と言います。何故こんな事をするのでしょうか。
それは自分が生きているうちは、まだ財産の名義を移したくないからです。また、場合によっては信託の内容を変更したいことがあるかもしれないからです。こうして自己信託の場合は、形の上では、自分が受託者になるのですが、自分が意思能力が無くなったり、死んだ後の後継受託者は必ず指定しておきます。

欧米では通常は民事信託にする時はまず自己信託にします。理由は今上に述べた理由です。
この場合は、欧米では、税務上の観点では、本人(ある人、委託者、受託者、多くの場合更に受益者)の財産状態は何も変わっていないと判断され、税制上の変更はありません。
自己信託のメリットは今述べたことですが、更に不動産の賃貸などをしている時は、家賃を払う相手が表面上は変わらなく、何も起こっていないように見えます。厳密に言うと、受託者としてのある人に払うという事なのですが。

自己信託は公正証書にして作ることもできますが、自分で文書を作ってもOKです。こういう文書の事を信託宣言と言います。自分で作った場合は、その信託からメリットを受ける人(受益者)に確定日付のある文書でその内容の通知が行った日に効力が発生します。

信託宣言の例
ここで具体的な信託宣言を見てみましょう。以下の事を箇条書きにします。
① 信託の目的
② 信託をする財産
③ 自己信託をする者の氏名、住所
④ 受益者
⑤ 受益権(受益者に信託財産からどういうメリットを与えるか)
⑥ 信託給付の内容(受託者はどういう時に、どのようにして、受益者にメリットを与えるか)
⑦ 当初受託者及び後継受託者(受託者が認知症になったり、死んだ時に誰が後継受託者となるか)
⑧ 本信託の効力発生および信託の期間
⑨ 信託財産の管理処分の方法
⑩ 残余財産の帰属と清算手続

民亊信託で大切な事は、その対象となる財産が特定していなければならないという事です。財産を動かすという事が民事信託の本質だからです。不動産の場合は登記の移動、株式の場合は株主名簿への新しい受託者の登録、銀行預金の場合は新しい受託者名義の預金の作成などが必要です。信託宣言の作成については当社にご相談ください。ご要望に応じてアドバイスいたします。

完成後、不動産の場合は、司法書士に登記を依頼します。お知り合いの司法書士さんでよいのですが、当社でご紹介もできます。不動産の場合は、この場合、信託の最終段階としての登記の完成という事があります。財産は1筆ごとに元の所有者としての本人から受託者としての本人に移転されます。そして信託目録が作られ登記されます。ここには、上記の信託宣言の例で書いた事の主要な事は全部書かれます。これで民事信託は完成です。