主要道路沿道建物の耐震診断が進まない理由
全国貸地貸家協会専務理事
全国貸地貸家協会新聞編集長
(株)耶馬台コーポレーション代表取締役 宮地忠継

当サイトでは2月と5月に、全国貸地貸家協会新聞に掲載された当局課長さんに対するインタビュー記事を掲載しました。今回それを一本化して掲載するに当たり、その前段として、耐震診断の進捗状況について考え、それが遅れている理由を分析しました。これらを認識し、その問題点を克服することにより、診断が一歩前進すると考えます。

東京都の実情  特定緊急輸送道路沿道の今回耐震診断義務化の対象となるビルは5000棟と言われていますが、現在までに耐震診断に取り掛かった物は数百棟、診断が終わりその結果が承認されて、実際に助成金が支払われたものは数十棟の模様です。何故進みが遅いのでしょうか、これを業務を担当する設計事務所の側からと、依頼するビルオーナーの側から考えます。

設計事務所の制限  実際にすべての建築設計事務所が具体的に耐震診断をできるわけではなく、過去に経験があり、また構造計算は外注するにしてもその外注の経験がある事務所は一気に数が絞られてくる。

値段の合わない色々な局面   都や国から出る助成金は多くの場合にかかる費用より足りなくなる可能性があり、この差額はビルオーナーが支払わなくてはならない。これに直面して、設計事務所とビルオーナーとの間で調整がつかなくなる。例えば設計図面が無い場合は新規に作成しなければならなく、経費が一気に膨らむ。また、アスベストが使われているビルなどは、その部分を被覆しなければ診断ができないため、経費が膨らむ。

小規模ビルの経費見通し  助成金は基本的には床面積から算出されるので、例えば500㎡以下などの小規模ビルは交付される金額が少額になる。耐震診断にかかる費用は床面積対応では減らないのでどうしても費用がオーバーする。オーナー負担が出てくる。

最終審査を通るか  診断結果は第三者機関で審査されるか、あるいは設計事務所関係の三団体での確認審査となる。いずれにせよ仕事の専門家的レヴェルからの一定水準が要求され、そういう発注に慣れていない注文者の意識との間にずれがある。

ビルオーナーの不安   ビルオーナーは診断結果が悪かった場合に耐震改修をせざるを得ない立場にされる。この場合、市区町村の助成がある場合は本人負担は1/6だが、助成が無い場合は2/3となる。市区町村の財政が厳しいため助成のないケースも多い。この場合本人負担は膨大なものとなる。そこで、ビルオーナーはできれば耐震診断を避けたい気持ちになる。また、神戸の大震災の際に倒壊ビルで圧死した入居者の親族がビルの所有者に対してした損害賠償請求事件で大きな賠償金(1億3000万円)が認められた。こうなると、オーナーの耐震診断をして結果が悪かった場合への不安は大きなものになる。

診断料の支払い  現状では診断料をオーナーが払った後、オーナーに対して助成金が出る。オーナーに一時的な資金負担が出る。東京都では、都から設計事務所への直接支払いを考えているが、まだほんの一部の区でしか実行されていない。

色々な選択肢   実はオーナーは自分のビルが古いことはよく認識しており、予てより、耐震改修、建て替え、更地にした後の等価交換による一部分の入手、更地にしての事業用借地権での賃貸、更地にして駐車場にする、そして売却などを検討してきた。そして結論が出なかった。今回、耐震診断をする前にこの辺の気持ちの整理をしなければならないのだが、それができない。

マンションの実情   マンションの場合は、今までに述べた諸条件の検討を管理組合の総会にかけねばならず、区分所有者の合意が必要となる。ハードルはさらに高くなる。一方で、修繕積立金が潤沢にあるマンションでは、ある程度の支出は可能となる。

今後の展望   これらの点を克服し耐震診断を進めなくてはならないが、条例の改正まで進むべき点もある。まずは問題点を全部出し合って、当事者が話し合うことが必要である。

以上、これらの点を考えながら、以下の当局とのインタビューをお読みください。

以下は協会新聞2月号と3月号に掲載された当局課長さんのインタビューの全文です。特定道路の旧耐震ビルの耐震診断は今まさに佳境に入ろうとしており、ビルオーナー、マンション区分所有者、マンション管理組合理事さんたちの必読内容です。

《訪問インタビュー》

東京における緊急輸送道路沿道
建築物の耐震化を推進する件

東京都都市整備局市街地建築部
耐震化推進担当課長 吉野 敏 郎
聞き手 協会専務理事・本紙編集長 宮地 忠継
編集部次長 加藤 久直

宮地 本日は東京都の都市整備局市街地建築部耐震化推進担当課長の吉野敏郎さんのお話しを伺いたいと思います。
吉野 よろしくお願いします。
宮地 吉野さんの所で都内の緊急輸送道路沿道建築物の耐震化推進ということをおやりになっていると理解しているんですけれども、最初に制度の概要と言いますか、おやりになっている緊急輸送道路沿道建築物の耐震化推進ということで、どういうことを問題点にして、どういうことをおやりになっているか、概略をちょっとご説明頂きたいのですが。
吉野 はい。都内に緊急輸送道路というのが二千キロございまして、昭和五十六年の五月以前の旧耐震で建てられて、かつ倒壊した時に道路の半分以上を塞ぐ可能性のある建物が一万二千棟あるんですね。

宮地 はい。
吉野 それで我われは、緊急輸送道路というのは震災時に非常に重要な機能を果たす道路ですので、その機能を確保するために沿道の耐震化を進めて来たのですが、今の既存の制度の枠組ではなかなか進まないので、もう一歩踏み込んだ施策が必要だということで、今回耐震化を推進する条例をつくったという経緯です。
宮地 今までの制度で、どういうことをされていたんですか。何でそれが進まなかったんですか。
吉野 もともと耐震改修促進法というのが阪神淡路大震災の時にできまして、東京都としてはその法律に基づいて指導・助言ができるんですね。耐震の診断と設計と改修の助成制度を作って、建物所有者にお願いベースで耐震化を進めて下さいという話は、ズーッとこれまでもやって来たんです。一昨年度三千棟の建物所有者への戸別訪問もやって来たんですが、最終的に耐震診断をするかどうかは、建物所有者さんの判断に委ねられていまして…
宮地 先ずは耐震診断の話ですね。
吉野 はい、これまで東京都はいろいろ施策を沿道の耐震診断については他よりも手厚く助成制度はやって来たんですね。
宮地 指導・助言だけじゃ皆やってくれないから、新たに制度をつくったということですね。
吉野 はい。今回の条例の一番のポイントは耐震診断の義務化ということなんです。
宮地 それで具体的にどういう新制度になったんですか。
吉野 先ず、もともと緊急輸送道路が二千キロあって、対象建築物は一万二千棟なんです。
宮地 その緊急輸送道路二千キロというのはこれはもう目ぼしい道路は全部先ずは指定したということですか。
吉野 もともと緊急輸送道路というのは指定されていたんですね。その中で条例に基づいて、二千キロある中の一千キロを特定緊急輸送道路と指定したんです。それでその一千キロの対象建築物が約五千棟になるんです。
宮地 これはどういう基準で特定緊急輸送道路に指定されたんですか。

吉野 もともと緊急輸送道路が一次、二次、三次というふうに目的に応じて分かれているんですが、東京都としては広域的な都内全域に形成されているような主要なネットワークを先ずやるべきだということで、広域的な観点、他県との結び付きとか、防災拠点となる区市町村庁舎を結ぶ道路、そういう道路を特に耐震化が必要な道路として指定したんです。特に他県との結び付きというのが大きいですね。
宮地 例えば、この図を見させてもらいますと、早稲田通りは指定されてないし、それから武蔵野市までの五日市街道なんかは指定されていませんよね。それはその辺の判断で指定されたということですか。
吉野 一次二次三次とそれぞれ目的があって全て重要な道路なんですが、東京都が広域的な自治体としてやるべきことというのがやはり第一次の緊急輸送道路の機能を確保するということだという判断ですね。
宮地 特定緊急輸送道路、これに指定された主要な道路、例えば環七、環八はもちろんのこと、環六もほとんど入っているし、あと青梅街道、新青梅街道、甲州街道はもちろんのこと、玉川通り、日光街道、水戸街道、京葉道路、等々が全部入っているんですが、こういう道路においてどういうことを対応しようということですか。
吉野 先ず、その特定緊急輸送道路に接する敷地に建つ建物のうち、昭和五十六年五月以前に新築された建物は、いわゆる旧耐震基準で建てられた建物ですが、旧耐震は設計において震度六強程度の大地震を想定してないですから、倒壊の恐れがあるので、先ず建物の耐震化を図らないといけない。
宮地 はい。
吉野 それから道路の機能を確保するということで、仮に建物が倒れた時に、道路の半分以上塞いでしまうと、道路の機能が確保できないので、半分以上塞ぐ可能性のある高さの建物を対象に耐震化を進めようということですね。
宮地 環七など、パッと見て幅が二五㍍か三〇㍍ぐらいはありますが、例えば三〇㍍とすると、高さ一五㍍以上の建物は全部対象になると。
吉野 そういうことですね。

耐震診断
宮地 吉野さんの認識で現在どこまで耐震診断が進捗していますか。
吉野 耐震化を最終的に成し遂げるためには古い建物だと耐震改修をするか、建て替えるか、除却というのもありますけどね。無くして駐車場に使うのも一つの耐震化です。東京都の助成を使わずに、独自で耐震改修をやる場合もありますので、完全には把握できないんですが、おおむねもともとの緊急輸送道路でも既に七〇%台ぐらいは耐震化がされていると。
宮地 そうすると先ほどの五千棟とはどういう関係になるのですか。
吉野 つまり五千棟というのは旧耐震と高さが道路の半分以上倒れる可能性のあるもので特定緊急輸送道路に接するのが五千棟なので、特定緊急輸送道路にある建物というのはもっとすごい数があるわけです。その内で、例えば新耐震基準で作られた物などを合わせた中で七〇%台のものは耐震性能があるということです。
宮地 そうすると五千棟のうちは相当残っている可能性はあるわけですね。
吉野 はい、そういうことです。旧耐震の物は耐震改修をやらないと耐震化が図れない訳ですから、旧耐震で条件に合うのが五千棟あって、その内のどのくらいが耐震診断をして、耐震改修をして、というのは、今回の条例で今年度の一〇月から耐震化状況報告というのを一月四日までの期限で出して貰って、現在三千二〇〇ぐらいは戻って来ているんですけども…
宮地 それはその五千棟に対して出したわけですね。
吉野 はい、そうです。そのうち耐震診断をしていない物が約八割ぐらい…
宮地 八割がまだ耐震診断してない・・・。
吉野 この状況報告はまだ残り千数百棟ございますので、確かな数字ではないのですが、先ずは耐震診断をやって貰わないといけないと。条例ではこの四月から義務化がかかって来るんですね。
宮地 今まではまだ義務化されてないわけですか。
吉野 はい。ただ今年度から申請はできるように、お金は出せるようにしたんですが、四月から耐震診断の義務化がされればもっと申請は出て来ると思いますね。
宮地 お金は今までも一応は出たんですね。
吉野 今までも出たのですが、今回この条例に合わせて相当拡充してますので、例えば耐震診断については図面があれば基本的に所有者には負担がかかりません。
宮地 それは四月一日からそうなるということですか。

吉野 今も既にそうなっているんです。助成申請というのは、区市町村が受付けをして、区市町村が一旦消費者さんにお金を払って、国や東京都は区市町村のほうに払うようになるので、区市町村は一旦予算化しないといけないんです。それが九月の補正予算でやった所が多くて、十一月頃から助成申請が受付けられるような整備が整ったと。
宮地 去年の十一月からお金が出せるようになったと。
吉野 そうですね。診断の義務化は四月からですけども、助成制度だけは今年度からやれる準備をしてたんです。八月末から五千棟に対して戸別訪問でお願いしてきて、今年度は昨年度の四倍ぐらいのペースで来ていますので、四月からはもっと申請が増えると思います。それで限度を二十五年度までに区切っています。
加藤 マンションとそれから延べ面積が一万平米以下の建築物は、全額出るということですか。
吉野 図面があればですね。
加藤 一万平米を超える建築物は二〇%ですか、所有者が出すのですか。
吉野 そうです。ただ割合は四%で、これは大企業が所有している建物が多いということで所有者負担を求めているという…
宮地 マンションと延べ面積一万平米以下の建物で五千棟の内九六%になるということですね。
吉野 そうです。ただ、マンションは合意形成が要りますので、二十四年度と二十五年度、二年間かけて診断が完了するぐらいのペースでやって頂ければなあと思います。
宮地 マンションというのは区分所有分譲マンションのことだと思いますが、マンションの合意形成という意味は、管理組合の総会の決議を取るということですか。
吉野 そうですね。
宮地 総会にかけてもこれは一般決議事項ですよね。だから過半数の賛成があればできると。
吉野 聞くところによると、規約で別に設定している所もあるみたいですね。その場合は規約改正なので四分の三です。
加藤 ざっくり言って、この五千棟の内マンションとマンション以外の比率は大体どのようなものでしょうか。
吉野 緊急輸送道路全体で一度アンケート取ったことがありまして、分譲マンションが一二%ぐらいです。だから五千棟でもこれくらいかなあと思っているんですが。
加藤 分譲マンションは意外と多いですね。
吉野 多いですね。ビルが五五%です。
加藤 耐震診断をするのはどういう人たちなんですか。
吉野 一級建築士、二級建築士、木造建築士とあるんですけども、診断したあとに補強設計をできる人ということで、通常建築士法で定められているその建物を設計することができる建築士という規定にしています。だから木造の場合は木造建築士とか二級建築士でも良いんですけど、鉄筋コンクリトになると一級建築士ということですね。
加藤 一級建築士であれば誰でも良いわけですか。
吉野 そうですね。(次号へ続く)

以下は後半です。

宮地 それでは具体的な条例の中味のご説明をいただきたいのですが、最初に先ず高さが道路幅員の二分の一以上の建物が対象ということですが、これはどういう意味なんですか。
吉野 仮に道路幅員の二分の一以上の建物がバタンと倒れるとすると、道路の半分以上が塞がれてしまう。残りが少なくとも道路の半分が確保されていれば緊急車両が通れるだろうと。
宮地 広告塔などはどうなんですか。
吉野 そういう簡易に後で付け足した広告塔のような物は、仮にそれが落ちて来ても車が通れるようには簡単に出来るでしょうということで、今回は高さの対象には入れないと。
宮地 高い高速道路はどうですか。
吉野 高架の場合はやはり上の道路を守るべき道路とすれば、今回高速道路も特定緊急輸送道路になっていますので、上から線を引くと。ただ、掘割、京橋のあたりに、高速道路でも地盤より低い所がありますけども、これは下から取ってしまうと、ほとんどの建物、平屋でも全部対象になってしまうので、やはりこれは道路面から高さを決めたということです。

罰金が科される
宮地 建物の持ち主の方は、何をしなければいけないかをもう一度ご説明頂きたいのですが。
吉野 今回特定緊急輸送道路と指定してその沿道の建物に対して三つの義務がかかるんですが、一つは去年の十月一日から施行した耐震化状況の報告の提出、これは、耐震診断・耐震改修をやったかどうかを建物概要と一緒に提出して頂くということです。まだしていない場合は、耐震改修予定を書いてもらいます。
宮地 建物概要というのは一枚の紙に書いてあるくらいで良いんですか。
吉野 診断をしていない場合はほとんど一枚です。ただ診断をした場合は少し提出書類が多くなります。それで我われは特定緊急輸送道路の沿道の建物の状況を全て把握できるということになります。診断を実施していない場合は実施してもらって、診断の結果耐震性が不十分だという場合は設計、改修に移ってもらうんですが、それは努力義務ということになっています。
宮地 義務化はできないのですか。
吉野 改修の場合は財産権の問題とかいろいろあって、義務化はなかなか難しいんですけれども、今回助成制度も拡充してますし、期限も区切ってますので、その診断結果を踏まえて自主的に改修してくれる人が多くなるんじゃないかと思っています。
宮地 それで耐震診断義務を履行しない場合ですね、何かお咎めがあるというお話しなんですが、どんなお咎めを…(笑い)
吉野 これは罰則的な規定で、罰金は五〇万以下と、命令をしても診断をしてくれない場合に公表できるという規定です。
宮地 建物名で公表するということですか。
吉野 建物も個人名が入っていたりすると少し考慮するんですけども、結果としては分かってしまうんですけどね。
宮地 罰金というのは個人が払うんでしょう。
吉野 そうですね。建物所有者個人ですね。
宮地 管理組合でも実際は各区分所有者の集まりだからそれが共有持ち分に応じて払うということですね。
吉野 はい。我われは建物所有者さんに科して行きますので、マンションの場合はそれぞれ個別に罰金を科すと。
宮地 公表はその場合はマンション名でするということですか。
吉野 まあ、そうですね。ただ、マンションの場合は、先ほどの合意形成で自分は耐震診断をやりたかったのに結果としてやれないというマンションも出てきますから、やりたいと言う人には罰金を科すことはできないと思うんですよ。だからそこで反対した人とか、耐震診断を出来ない原因者に対して罰金を科すということなんです。
宮地 法律的に原因者だけに罰金を科すことはできるんですか。その場合は記録が必要でしょう。マンションの総会で反対者がいて、反対者が多かったから出来なかったということで、反対者だけに罰金を科すには。
吉野 はい。それはやらなかった人に一律にするわけではなくて、個別のいろいろな事情があると思うので、事情に応じて罰金を科すべき時は科して行くということになります。

耐震診断の助成
宮地 耐震診断の助成をおやりになるということですが、どういう形でおやりになるかご説明を頂きたいのですが。
吉野 診断については義務化ということで、基本的には消費者負担がない制度につくってます。耐震診断については国が三分の一で残りは全部都が出すという制度をつくったんです。
宮地 一万平米以下の場合は全額出すと。
吉野 そうですね。マンションは規模は関係ないんですが、マンション以外の延べ面積が一万平米を超える建築物については大企業が所有している物が多いということと、全体の四%ということもあって、所有者に五分の一の負担を求めているということです。
最終的に二十七年度までに耐震化を完了したいという目標があるので、診断は二十五年度までを期限にさせてもらっています。

助成基準単価
宮地 助成基準単価というのはいろいろ複雑になっているようですが。
吉野 一応助成基準単価というのがあってそれで計算しますが、ただ小規模のものが少し値段が高くなる傾向になりますので、三千平米未満の場合は一階あたり一五万加算があります。これは東京都が独自に作ったものです。単価は国費が三分の一入るので統一的につくられた単価なんですけども、その単価でかつワンフロア当たりの加算金額があれば、耐震診断は出来るだろうということで、結果として所有者負担は無くなりますよと。
宮地 助成の上限を一応決めているけれど、その中で全部収まるであろうということですね。
吉野 そうですね。千平米以下が平米当り二千円、千平米を超え二千平米以下の部分は平米当り千五百円、二千平米を超える分は平米千円と一応決めているわけですね。
宮地 助成の上限はどのくらいですか。
吉野 五千平米の場合は単価は、例えば診断で見ますと、五千平米の場合上限で六百五十万まで助成金が出ますと。逆にいうと五千平米の場合は六百五十万あれば診断は出来るだろうということです。
小さい物件が多くなると当然割高になって来ますので、大きい物件だったらもっと値段も少なくなる可能性がありますので、やっぱり延べ面積の規模によって違ってくるということですね。
加藤 小さい物件の場合は階数による加算があるということですか。
吉野 面積だけでは診断が出来ないということが東京都の助成実績でも分かりましたので、今回各階当り一五万円の加算をしたと。
加藤 一〇階だったら百五十万プラスになるということですね、耐震診断の費用が。
吉野 はい、三千平米未満の場合ですけどね。
宮地 はい。それで助成金はいつ頂けるのですか。
吉野 先ず区市町村に申請してもらって交付決定通知が出されると先ずそこで初めて業者さんと契約して仕事が始まって、最終的に仕事が終わってから、完了届というのを市区町村に出すと区市町村のほうでチェックして、初めて助成金が支払われると。
加藤 支払われるまではどのくらい時間がかかるんですか。
吉野 平均的には大体一か月半かかっていると言ってますね。

マンションの耐震診断
宮地 あと、オーナーさんの場合は自分一人で決めればいいんでしょうけど、マンションの場合は果たしてうまく決まるんですかね。おまけに耐震診断をして拙い結果が出た場合、耐震工事をしなければいけないわけですね。その辺の見通しはどんな感じですか。
吉野 我われとしては、耐震診断を踏まえて働きかけて行くしかないですね。二十七年度までに一〇〇%耐震工事を終わるという目標に向かってやっていくしかないと。
今一月二月と言うのは総会とか理事会の季節ですので、総会や理事会で説明に来てほしいという要望がものすごく多いんですよ。
加藤 要望が多いわけですか。
吉野 はい。先ずはどういうふうなステップで進むのかとか、そういう話を聞きたいと。逆に今回の条例に合わせて助成金が 出るんであれば先ずは診断をやりたいというような声が結構多くて、土・日が理事会とか総会が多いんですけども、職員を分けて、総会とかに出席してこれを説明しているんですね。診断結果を踏まえて今度は改修設計になる時でも、我われはどんどん説明に行って、やりやすい環境づくりというのはズーッと引き続きやって行かないといけないと。
宮地 はいはい。
吉野 それをやればどうしても自己負担が残りますので、その辺の問題あると思うんですが、耐震化というのは耐震改修までやらないと意味ないですので、ぜひお願いしたいですね。

テナント入居ビルの対応
宮地 あと二点だけ質問なんですが、一つはこの間の大震災の時に一部は被害を受けている所があると思うんですよ。その場合は例えば壁に亀裂が入っているとか、梁が折れているとか、マンションとかビルに住んでいる人は分かっていると思うんですが、その辺はどうなんですか。
吉野 中の人がわかっているようなヒビ割れが起きたとかいうのは、専門家は分かりますから、それは当然診断結果に反映される物だと思います。
宮地 あともう一点は入っているテナントが大変だとさっき仰ったんですが、それはどういうことですか。
吉野 診断する場合は、現地でコンクリートの強度を調べるのにコアを抜く程度で…
宮地 コアというのはコンクリートを抜くということですね。
吉野 はい。診断の場合はそんなに影響ないと思うんですが、設計とか改修になった場合は工法によってはやはり影響が出てくる場合がありますよね。居ながら施工するにしてもお客さん相手に商売してる人とか…。そのビルによってその状況が違うと思いますので、その耐震改修工法に何を選ぶか、居ながら業務をしながらできるのか、そういう話し合いがスムーズに行ければいいと思うんですけどね。
宮地 そうですね。
加藤 ホームページに出ているこのマンション耐震改修事例というのはこれは今回の緊急道路のものとは違うものですか。
吉野 これは緊急輸送道路以外のマンションはこれでできますよと。緊急輸送道路の場合は補助率が高いので、通常は対象になるのは緊急輸送道路の補助を使えますね。こっちはその道路から一皮奥の、それ以外のマンションのことです。
宮地 分かりました。本日はどうも有難うございました。